孤独と孤立
学生時代だから大分昔の話になるが、ある時恩師が「孤立はいいけれども孤独は怖い」と問わず語りに言ったことがあった。私と恩師とで二人並んで歩いていた時で、どのような流れでそんな話題になったのか記憶にない。ただ、先生がその時遠い目をしていたのが気になって、今でも澱のように心に残っている。
私はその当時は「孤独なんてことは当り前じゃないか」とぽかんとしていた。人が人生で全的に認められることは有り得ない、だから人が孤独なのは前提なのだと思っていたのだ。その前提に比べれば、人と人との関係性でいたぶりなどにも発展しうる孤立の方が怖いとさえ感じていた。
だが一定の人生を生きた私は、人生における孤独は前提というよりももっと重苦しく暗い、観念のみの世界にふり落とされるものなのだと思い知った。孤立と同時に孤独も怖い、そんな自身の意識活動の根本に震えながら、私は三十代を迎えようとしている。
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