時間感覚と「死」

 生きている人間がその場その場で感受する時間感覚は、様々なときどきで千変万化する。とても長いように感じたり、あるいはとても短く感じたりもする。子供時代にはあんなに長かったと思われた時間が、大人になるとぐんと急に進みだすというのはよく言われることであろう。ここまでは誰しもが実感として容易にうなずけることと思う。
 では何故そのような時間感覚の変貌が起こるのか。
  おそらくは「死」という一事、人間はいつかは死んで無に帰するという事実が思考の射程内に入ってくるからではないか。だからこそ、人は時間感覚という存在をのりこなすように生きるこの世界の何かに夢中になって「死」を締め出したり、あるいは「死」と手をとりあって、すこしずつでいいから時間感覚をおそくしたりするように思う。

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