整理するという事
物事には整理するという営為がつきものである。要るもの・要らないもの、喫緊のもの・そうでないもの、仕分けることで人間は初めて心を決めて動き出すことができる。ただ闇雲に動くのに人間は向いていない。動物としての本能のほかに、思考能力を持ってしまったからだ。何かを仕分けてこそ、最大限の力を発揮する道を得るのは、人間の特色である。
しかし、人間の一生自体が、要不要をふくめた意味性で捉えることができない謎そのものである。何かのために生きてみせる、と心を決めることはでき得る。そしてそのような姿は、人の目には凛々しく映る。ただ、今の世は、決心するにはあまりにも多くの物事がうつろい過ぎている。また「整理して動く」という人間の特質を、気力として持てない者はどうなるか。この意味性に溢れた世界では底に落ちていく他ないであろう。
整理するという営為には、整理することのできない無数の物事をこぼれ落とす、ということも含まれている。人間としての生き方には、金銭的・社会的な物事を筆頭に、整理が欠かせないことは確かだ。だが、整理によって汲み尽くせない無数の存在がこの世には確かにある。信じるか信じないかその一心に掛かっているが、生を受けた以上、この無数の存在を自身に棲まわせることほど滋味深い営為はないのではないか。その上で整理を積み重ねることが、人間として生まれてきた責務であろう。
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