眠る

 人は眠気に身を任せられる場合と、任せられない場合がある。夜横になり、目をつぶっても、安らかに夢へと誘われない記憶は誰にでもあるだろう。ましてや不眠症などにかかってしまうと、眠れるかは運次第ということにもなりかねない。辛いことだが、眠るくらいは自分ひとりの勝手でどうにかしなければならない。

 現代の日本には、「睡眠」について様々なことが言われている。科学的な見地から「何時間睡眠がよい」「寝床に入る前にこれこれしかじかのことをすると効く」と説くもの、あるいは打って変わってスピリチュアルなアプローチ、さらには宗教的なことなど、これまでもこの世では多くのことが言われてきた。

 しかし実際に自分に合うものを見つけ出すのは、誠に難しい。下手をすれば金銭をドブに捨てることにもなりかねない。いくら何時間寝るのが良いと言われたところで、それに縛られ体調を崩すのも滑稽である。人間は一人一人違うこともあり、「眠る」という一事だけで難儀なことだ。

 私もイヤになってしまう。人と違う自分を認識するのは、(睡眠に限らず)辛いこともある。ただ、「自分が自分である」という難儀さを楽しめるかどうか、人生をそのようにして生ききれるかどうか、というのも己身一つで決まる。

 「眠る眠れないくらいどうということはない」と開き直って朝を迎えるのも、それはそれで悪くないのかもしれないな、とふと思う。

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