自立の精神

 「自分の機嫌は自分でとる」これはお笑い芸人のみやぞん氏の言葉である。今の芸能界はうつりかわりの速さが異様で、みやぞんを思い出すことも少なくなったがこの言葉は折りにふれて思い出す。

 彼はテレビタレントとしても世間的にも「天然」ということで通っていた。しかし私には、みやぞん氏を「天然キャラ」の枠に入れてしまうことは出来なかった。世知辛い今の世の中では、「悩みがなさそうでいつも頭からっぽで幸せそうな人」を頭の弱い人間と捉えがちだ。だから例えばテレビ番組ではみやぞんの「天然エピソード」の収集に終始していた。

 だが、悩みのなさそうな明るい人を「天然な人」と当て推量して本当に良かったのか。

 私にはそうは思えない。むしろ、みやぞん氏は自身の力で己と折り合うことの出来る立派な人間なのではないか。あるいはだからこそ「自分の機嫌は自分でとる」という言葉を吐けたのではないか、と私は腑に落とすことになった。

 自立の精神とはそういうものである。日の目を浴びようが浴びなかろうが、己で己自身の面倒をみる。それは相当に孤独な作業だろう。ただ、その孤独に耐えられなければ、人と向かい合う資格はないのだと思う。

 冒頭の言葉は私にそういったことを教えてくれた。有難く思っている。

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